川又健康情報新聞1999:1:25 第318号
薬用人参の歴史
今や世界各国で様々な形で使われている「薬用人参」は、いつ頃から使われていたのでしょうか。
中国最古の本草書として名高い『神農本草経』によると、その効果は、・・・
「五臓を補い、精神を安んじ、魂魄を定め、驚悸を止め、邪気を除き、目を安らかにし、心を開き、智を益し、久しく服すれば身を軽くし年延」とされています。これを現代風にアレンジしてみると、「滋養強壮、精神安定、精神賦活、老化防止、生命延長」など、健康保持の目的に使われていたと考えられます。
この書物は、中国の後漢から三国時代の間に成立したものなので、薬用人参は、はるか二千年以上の昔から使われていたことがわかります。
日本に渡来したのは奈良時代とされ、天平十一年(七三九年)に渤海国(現中国東北地区にあった国)の使者により献じられたとの記録があります。また正倉院の御物の薬用人参は、天平勝宝年間に唐僧鑑真がもたらしたものとも伝えられています。ただし、高価な薬用人参の服用は、地位の高い人の特権であったようで、一般に利用されるようになったのは、18世紀以降の徳川幕府が薬用人参の栽培を奨励し、成功してからのことです。
- 本草図譜(ほんぞうすふ)
江戸中期の本草書。岩崎灌園著。(写真は大正11年の復刻版)
- 神農本草経(しんのうほんぞうきょう)
中国の後漢から三国時代の間に成立した世界最古の本草書。(写真は昭和46年 盛本堂刊行本)
- 本草綱目(ほんぞうこうもく)
中国明代の薬物書。全五二巻から成る一八九二品目の薬物を収載。季時珍著。(写真は江戸時代に刊行された本版刷本)
薬用人参の働き
- 胃腸病と薬用人参
私達は食物を胃腸で消化・吸収します。健康な場合はこの作業がスムーズに進みますが、ストレスや不規則な生活を強いられている現代では、なかなか思うようになりません。そんな時、薬用人参は、胃液分泌のバランスを整え、抗ストレス作用により、胃粘膜に対する攻撃因子を取り除き、更に潰瘍などをおこした粘膜の修復機能を高める働きを持っていることがわかってきました。
- ガンと薬用人参
私達の身体を構成している細胞の約80パーセントは、約三年間で新旧の交代をしているといわれています。古い細胞は分裂する前に、新しく生まれてくる細胞に情報を伝達しています。しかし、ある時突然細胞に変化がおきて、異常な細胞(ガン細胞)
が誕生してしまうことがあります。
薬用人参は、この様なガン細胞に直接作用するのではなく、ガン細胞を特異的に攻撃する細胞を活性化させます。すなわち、日ごろから人参を服用しておけば、ガンの予防につながるといわれています。またギンゼノシドRh2というサポニン成分が癌細胞の増殖を抑制することがわかっています。
- ストレスと人参
ストレスの原因には、現代社会の象徴とされる高度情報化・高度技術化が強いる心理的なもの、自然環境の変化や、騒音や排気ガスなどによる物理・科学的なものなどがあります。ストレスとは、肉体的、精神的障害に対して身体が、その環境に適応しようとする反応です。この反応に応じて副腎皮質からホルモン分泌がおこなわれますが過剰の分泌によって身体に変調をおこし、これがストレス病となります。薬用人参は、このホルモン分泌の調整を行って正常に保つ働きを持っているといわれています。
- 免疫と薬用人参
私達の体の中には、目で見ることのできないウィルスや細菌に対して、自動的に無毒化し、それ以上深く体内に侵入しないようにする働き(免疫機能)があります。しかしこの機能も働きすぎると、自分自身の体までむしばむことのなります。人参にはこの免疫機能の異常を正常化させる作用が報告されています。例えば、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、血液中にIgE(免疫グロブリンの一種)が多くなり、これらが必要なときにはどんどん生産させ、不必要になれば生産を中止させるように働きます。
- 自律神経と薬用人参
私達の体が生きていくうえで、基本的に必要な体の働き、体温の維持、血液の循環、内臓の働きなどは脳がとくに命令しなくても行えるしくみになっています。
これは、交感神経と副交感神経が互いにバランスを保ちながら働いているからです。このバランスが崩れると、足・腰の冷え、関節痛、肩こり、頭痛、更年期障害、不定愁訴など様々な症状が現れてきます。
薬用人参は、これらのバランスを失った自律神経を正常化させ、安定させる作用を持っているといわれています。
- 血糖と薬用人参
食生活の変化や運動不足、食べ過ぎ、過保護による偏食などによって大人だけでなく、子供の糖尿病が増えつつあります。糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)を各組織に送る量を調節する働きのインスリンというホルモンの不足が原因で、血糖値の高い状態が続く症状をいいます。薬用人参には、インスリン様物質が含まれていて、これが血液中の糖分を取り込んでエネルギーに変換するのをスムーズにし、血中の糖分を一定に保ち、尿中の糖を少なくすることがわかり、血糖調節に効果があるといわれています。また、薬用人参中に含まれるポリペプチドやパナキサンと呼ばれる多糖類が血糖降下に役立っていることも判明しています。

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